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第3章 林檎[8]


総二郎side






ゼミの課題で調べものをする為に、
大学の図書館にいた。
この図書館は私立の一大学にしては、
日本5本の指に入るくらい蔵書を揃えてある。

カントの三大批判書の原語版を探す為、
ゼミが始まる前に図書館に立ち寄った。
原語の中でも出来る限り、一番古く出版されたものを手に取る。
装丁自体が格式を物語り、重厚感が歴史を感じさせる。
ひとしきり内容を調べ、借りる本の検討をつけた。


図書館のロビーに戻ると、外を見ながら
一部の女子学生達がヒソヒソ話をしていた。
「牧野さんよ・・・。」
牧野?
ガラス越しに、校舎に向かって歩く牧野が見えた。
あいつ・・・。
またボケっとしながら歩きやがって。
声掛けようと外に出たが、メールで稽古をやめたいと言って来た事を思い出した。
前までだったら揶揄ったり調子軽くして、
多少強引がちでもそんなの認めねぇよって
返信していただろう。
でも、あの海での事やラウンジの事など
色々なやり取りが頭に浮かんでしまって、
声掛けを思わず躊躇してしまった。


そんなことを考えていると、
頭上がきらっと光ったのがわかった。
背の高い男がその方向を見上げたかと思うと、
「危ない!!!」と叫び声と同時に、牧野を引っ張った。
ガシャーンと椅子が落ち、周囲が騒ぎ出す。
牧野は状況把握が出来ていないようで、
呆然として立ち尽くしている。
青ざめた牧野は微動だにしない。
そんな牧野を引っ張った男が、おもむろに牧野を抱きしめた。


誰だ?


こちらからは顔が確認出来ない。
牧野は足腰が立たなくなったのか、へたりと座ってしまった。
男は牧野を抱き上げると、顔を牧野に近づけた。
やっと男の顔を確認すると、何処かで会った事がある顔だった。
確か、夏休みに牧野のバイト先の飲み会にいた男・・・。


牧野はまだ引き攣り気味だけど、笑い顔を覗かせていた。
男にまた耳打ちされ、今度は真っ赤になった。
抱き上げられたまま、牧野はバイト先の男に運ばれていく。

一連の流れまでたった5.6分の出来事だった。
時間の流れが止まっていたのを思い出したかのように、
周囲にいた人間が動き出す。
その中にいた数人の女どもが俺に気がつき、キャンキャンと煩い。
女達の声を無視して歩き始めたが、
脳裏に浮かぶのは男に抱き上げられて
顔を赤らめた牧野だった。

俺には見せた事のない『女』な牧野。
なんであの男には『女』の部分を見せるのか?
あいつの事を好きなのか?
沸々と暗い感情が湧きあがる。
自分の感情なのに、自分ではコントロール出来ない。
ただ、ひたすらに黒い感情が俺の心を蝕んでいく。


俺は初めて嫉妬と言う感情を知った。








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Comment 2

河杜 花

Re: 大人の階段上った?w

haruwo サマ


総二郎ってオンナに関して
嫉妬と無縁な生活を送っていたのだろうと
勝手に思っています。
なんでも手に入る人たちだからね~。

総ちゃんのお初?
総二郎は・・・ちゅ、中坊だよね?
困ったぞw

2016/11/30(Wed) 23:16

Edit | Reply | 

河杜 花

Re: タイトルなし





そうなのよ!悶々としすぎなのw
みんな本気でぶつかっていくんだから
油断大敵ですよね~?!


総二郎、エンジン始動させますかね?
がんばって、もらいたいw

2016/12/01(Thu) 09:16

Edit | Reply | 

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