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友達以上彼女未満 総二郎side③



ある日、西門で牧野に稽古つけていた時だった。

それまでの晴天が嘘のように暗くなり、黒い雲が空を覆ったかと思うと突然雷鳴が轟いた。するとその途端、牧野は弾かれたかのように飛び上がり、急にガタガタ躰を震わせ始め、畳の上で蹲ってしまった。慌てて声をかけたが、俺の声が聞こえていないくらいに怯えてしまっていた。

牧野が雷が嫌いだなんて、今まで聞いた事がない。だけど牧野のあまりの豹変ぶりに、この雷が関係しているのは明らかだった。
雷鳴によって飛び上がるほどのトラウマだなんて・・・。
おそらく司が関係しているのだろう。何の証拠もないが、直感的にそう確信した。


俺は自然と牧野を抱きしめ、震えている背中をひたすらさすった。その間も外は雷の音と光とで、荒れ狂っている。声を押し殺して泣きもせず、牧野はじっと雷雨が去るのを耐えている。雷の轟く音が鳴り響く茶室だというのに、俺の耳には牧野の苦しむ息遣いしか聞こえない。

体を小さくして震える牧野は、酷く青褪め、今にも消えて無くなりそうだった。
高校時代よりも痩せてしまっていて、細て儚げな躰は、抱きしめただけで壊れてしまいそうだ。虚ろで焦点の合わない瞳に、光は灯っていない。

牧野、おまえ、本当に意地っ張りだよな。
仕方ねぇ・・・。
気の済むまで、俺がずっと抱きしめてやるよ。
お前の心が和らぐまで、俺の胸の中にいればいい。





数時間後。
立ち上がる事ができるようになるぐらいに落ち着いてから、牧野をアパートまで送っていく事にした。茶室に牧野が蹲ってからアパートに着くまでの間、会話らしい会話はなかった。いつもなら車に座ったと同時に寝落ちしてしまう牧野が、ずっと外を眺め続け、一言も喋らなかった。

そんな状態の牧野に、俺も話しかけたりしなかった。そっとしてあげていたなんて、カッコいいもんじゃない。
俺はただ、牧野に余計なことを言って軽蔑されるのが怖かった。
騒めく自分の心を見抜かれるような気がして。



アパートに着いて部屋の前まで付き添い、牧野が自分の部屋の鍵をだした瞬間だった。
「・・・何も聞かないんだね。」
下をむいてボソッと牧野が呟いた。不器用にひきつりながらも、頑張って微笑もうとしているのがわかった。
「聞いた方が良かったのかよ?」
牧野の負担になりたくなくて、敢えてライトな口調で返答してみた。

いや、違う。
本当は聞き出したかった。
お前の抱えてる闇を共有させてくれ…と。
だけどいつもの俺でいたほうが牧野は安心するだろうと、俺は自分の心に蓋をしたのだ。


「ううん・・・、大丈夫。ありがとう・・・。
良かった。あの時にいてくれたのが西門さんで。
今日は本当にありがとう。また、明日ね!」
最後の最後で、漸く笑顔を取り戻した牧野。
パタンとドアを開け、内側から鍵をかけた音が聞こえた。
電気がついたのを確認した後、アパートを背にし、車に乗った。

エンジンをかけて、アクセルを踏む
さっきまで隣に座っていた牧野。
牧野がいないと車内設定温度より、寒く感じる。

運転をしながら、先ほどの自分の行動を思い返していた。
無意識に出ていた答えに苦笑する。


牧野の手を取りたい。
牧野をずっと抱き締めたい。
牧野を幸せにするのは俺だ。
俺は牧野が好きなんだ・・・。






CLAP
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