友達以上彼女未満 総二郎side⑤



縁談まで半年もあるというのに、渋沢家から真璃愛のお稽古を是非と連絡が入った。
俺が断るなんて全く考え付かないのだろう。
女癖の悪い若宗匠に餌を与えて、既成事実を作りこみたいのか・・・。
これから毎週金曜日にマンツーマンで、その女の稽古をつけることになってしまった。

なのにいざ稽古をつけてみると、既に西門の作法を身に付けている。師範レベルとまではいかないが、それなりに一通り出来ているようだった。俺に稽古をつけてもらうというのは言い訳で、俺に近寄りたかっただけってわけだ。真摯にお茶と向き合っている牧野と大違いだな。

「真璃愛さん。私がお教えしなくても、大丈夫のようですね。
次回からは弟子たちがお教えして・・・。」
「ねえ、総二郎様。私達の挙式の事ですけど、メープルもとても素敵で良いのですが、
恵比寿にあるウェスティンホテルも素敵らしいですわ。こちらで式を挙げませんこと?」
「・・・真璃愛さん。私はまだ貴女との縁談をお受けしたつもりはございませんが?」
「まあ、意外と慎重な方なのね。それも素敵な一面ですわね。
でもね、総二郎さん。あなたは私と必ず結婚することになりますわ。」
渋沢真璃愛は大学2年生だ。入学時に俺のことを知り、本人曰く「一目ぼれ」をしたらしい。入学したての1年生で英徳学園大学のミスとなったの美貌は伊達ではなく、見た目は確かに美人の部類で、モデル並みのスタイルの持ち主だ。勉強もそこそこできるらしい。
だけど、お眼鏡にかなった男が、自分のことを好きになるのは当然だという思考力は、甘やかされて育ってきた典型的な「お嬢様」そのものだ。
どんだけ出自が良くても、才色兼備でも、渋沢真璃愛は俺にとって迷惑な存在でしかない。

「残念ながら私は貴女と結婚するつもりありません。」
「・・・縁談まであと半年、でしたわね?
その半年はまだまだ遊びたいと言う事ですわね?ならば問題ございません。
縁談のお話を発生した時点で、もう決まったのと同然ですわ。」

とことん噛み合わない会話に、薄ら寒くて冷たい空気。
温かみなんてあったもんじゃない。
「ではまた来週の金曜日、お伺い致しますわ。
もっとお互いを知る必要性がありますわよね。
大学でも、お会い出来るのを楽しみにしてますわ。」

なに抜かしているんだ。
冗談じゃない。
この女と結婚しようものなら、
毎日が生き地獄の様な日々となるだろう。
そんなのごめんで、想像ですらしたくはなかった。

縁談まであと約半年。
俺に与えられた時間はそう長くはなかった。




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