友達以上彼女未満 総二郎side⑦


牧野とは相変わらず友達以上彼女未満な関係。
アイツにとって俺がどんな存在になってきたかわからないまま、縁談まで2ヶ月を切っていた。こんな時に限って仕事は忙しく、どんなに忙しくても欠かさなかったバイト送迎を今日は出来そうなもなかった。
夕方まで名古屋、その後渋沢真璃愛の父、渋沢栄一議員のパーティに家元の代理で出席することになっていたが、どうも気分が乗らない。とりあえず顔だけ出して挨拶したら、すぐにでも牧野のところへ行こう。少しでも一緒にいたい・・・。

パーティ会場に行くと、総理大臣候補らしく、堂々とした振る舞いをした渋沢栄一議員をすぐみつけることができた。渋沢議員を取り囲む取り巻きは甘い汁を啜ろうと躍起になった奴らばかりで、どいつもこいつも舌舐めずりしているようにしか見えない食えない輩ばかり。そんな人間達を鮮やかに遇らう渋沢議員は、表面上は満面の笑みだが目の奥が笑っていない。若いながらも老練な政治手腕を持っているようだ。
「お久しぶりです。渋沢議員。お目にかかれて光栄です。本日は家元の代理でお伺いさせて頂きました。」
「これはこれは西門の若宗匠。娘がお世話になっております。」
「おお・・・!渋沢議員の娘さんは若宗匠のお弟子さん?もしかして婚約されるおつもりとか?」
取り巻きが発したこの一言を聞き付け、ミーハーども達が、勝手に勘違いをはじめた。
「いえいえ・・・。でも若宗匠のご指導はとても優しいとか。娘を可愛がって頂いてるなんて有難いことです。まあ、2カ月後には繋がりがより強固なものになるかもしれませんしね。」
小さな歓声があがると、取り巻き達は俺と渋沢真璃愛の婚約が決定したかのように、大騒ぎを始めた。
してやったりチラリと俺をみた渋沢議員は、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「渋沢議員。お約束はあと2カ月後ということでしたが、残念ながらそれはなかった事になります。真璃愛さんは既にお茶の嗜みも心得てますから、もう教える事はなに一つございません。私以外のご指導があったほうが、今後の人生を豊かなものとなるのではと思いますよ?」
渋沢議員の鋭い視線と俺の視線が静かに火花を散らす。その目の奥には何かしらの思惑があるはずだが、伏魔殿の住人達を飼い慣らす百戦錬磨な男は、極めてスマートに笑みを保つ。表立って己をだすような愚かさはない、食えない男だ。
これ以上この男の側にいると、誤った発言で周りを懐柔し、狙った獲物の逃げ場を失わせるように追い込んでいくだろう。
「お引き留めして申し訳けありませんでした。失礼致します。」

ワラワラと集まってくる輩を振り切りながら、会場を出て西門の車に乗り込む。
車に乗った瞬間から、考える事はアイツのことだけ。

牧野に会いたい。
あの笑顔に触れたい。

牧野の笑顔を思い浮かべた途端に、腹の虫が鳴るとは・・・。
こういうのって恋人同士ってやつだと、似てくるもんなのだろうか。
そう言えば会場では、何も口にしていなかった。
時計を見てみると夜の遅い時間帯ではあったけれど、
そろそろ牧野のバイトが終る時間でもあった。
牧野の手料理が喰いてぇな・・・。

西門の使用人に連絡して、急いで食材を購入させる。
そして牧野のアパートに向かった。



そして。
牧野の本当の気持ちを・・・、俺は知ることとなるんだ。





CLAP
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